第19回社会福祉・医療事業の経営研究セミナー
自治体病院におけるオンライン診療の役割と展望
主催:一般財団法人 社会福祉・医療事業の経営研究会
後援:総務省、厚生労働省、広島県、広島県医師会
オンライン診療は、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として急速に制度化が進み、いまや国の医療政策の中で重要な柱の一つとなっています。厚生労働省による診療報酬上の評価体系の整備、総務省による地域デジタル基盤の推進、さらには地方自治体による通信インフラ整備の進展などを背景に、その活用領域は急拡大しています。しかし、オンライン診療の社会的役割と経営的な持続可能性については、まだ十分な共通理解が形成されていないのが現状です。
特に自治体病院は、地域住民にとっての「最後の砦」として、単なる医療提供機関を超えた公共的使命を担っています。都市部においては利便性を強調した「コンビニ診療」的な側面が注目されがちですが、自治体病院が果たすべきオンライン診療の本質的役割は、むしろ地域の医療アクセス格差を是正し、適切な医療資源配分を実現する「トリアージ基盤」としての機能にあります。すなわち、医療相談を入口として、重症・緊急性の高い患者は病院での対面診療へ誘導し、一方で軽症者や一時的な体調不良による「コンビニ診療」を極力抑制し、真に必要な患者が安全かつ確実に医療を受けられる環境を整備することが求められます。これは、患者行動の適正化と医療提供体制の持続可能性を両立させるための新たな地域戦略といえます。
このような観点から、オンライン診療の導入目的は単なる「利便性向上」ではなく、以下の三つの社会的価値創出にあります。
①
中山間地・島しょ部におけるへき地医療支援:交通・移動制約の大きい地域住民に対し、専門医の診療やフォローアップを提供することで、医療の公平性を確保する。
②
医師偏在分野(特に小児科)の補完:医師確保が困難な地域において、専門医がオンラインで地域医療を支援することで、地域間格差を最小化する。
③
救急・休日夜間診療の効率化:初期トリアージをオンラインで実施し、限られた人員資源を最適配分することにより、救急体制全体の持続可能性を高める。
一方で、診療報酬体系の成熟度、ICT 環境整備コスト、採算性の確保といった課題は依然として大きく、自治体病院においては「導入すべきか否か」ではなく、「地域特性に応じて、どのような形で導入し、持続可能なモデルを構築するか」が問われています。その際、単一のモデルに依存するのではなく、地域の医療資源や人口動態、通信インフラの成熟度、地域住民におけるデジタルデバイド等の状況に応じて、複数の連携パターンを柔軟に選択できる仕組みが求められます。
本セミナーでは、厚生労働省による最新の制度動向と診療報酬改定の方向性、総務省による地域デジタル基盤整備の視点、さらに小児科領域における実践的事例を交え、自治体病院が直面する課題を多面的に検討します。特に、へき地医療の現場で注目される「D to P with Nモデル(専任看護師による地域小児診療支援)」の有用性と、「D to P with Dモデル(専門医による地域小児診療支援)」の必要性に焦点を当てて、オンライン診療が医師確保・医療偏在解消に果たしうる具体的な機能を明らかにします。
また、オンライン診療は地域医療連携のハブとなる患者との接点として地域全体の医療資源を動的に最適化する入口機能を果たします。すなわち、オンライン診療は医療DXにおける地域医療基盤の「運用層」として機能し、地域医療の効率化と公平性を同時に実現する可能性を持っています。
本セミナーは、自治体病院の経営層、自治体の医療政策担当者、公立病院の診療体制整備に関心を持つ関係者にとって、「オンライン診療とは何か、なぜ必要か」を再確認し、共通理解を形成するための知的基盤を提供するものです。地域医療の持続可能性を高める政策的・実践的議論の場として、本セミナーは次世代の地域医療構想の具体化に寄与することを目指す実践的な議論の場として、ぜひご参加ください。
一般財団法人社会福祉・医療事業の経営研究会 代表理事 西田在賢
開催概要
開催日:2026年(令和8年)2月21日(土曜日)13時00分から16時15分まで
会場:広島県医師会館201号室(定員100名)
ウェビナーオンライン(定員250名)
参加費:5,000円
セミナープログラム
13:00~13:10
開会の辞
13:10~14:30
講演第1部
【座長】
全国健康保険協会理事
広島県立病院機構評価委員会委員
木倉 敬之
13:10~13:40
基調講演①「自治体病院に期待される役割」
総務省準公営企業室室長
徳大寺 祥宏
13:40~14:10
基調講演②「オンライン診療をめぐる制度動向」
厚生労働省医務技監
迫井 正深
14:10~14:30
講演「広島県小児医療の現状とオンライン診療の可能性」
広島市立舟入市民病院副院長/小児科部長
岡野 里香
14:30~14:40
<休憩>
14:40~15:30
講演第2部
14:40~15:05
特別講演①「少子化・小児科医不足時代に子どもたちの健康をどう守るか・・・オンライン活用の現場から」
株式会社Kids Public 代表取締役/医師
橋本 直也
15:05~15:30
特別講演②「地域医療体制に応じたオンライン診療導入と連携基盤の必要性・・・D to P with X(多職種)選択モデル」
県立広島大学地域基盤研究機構特命准教授
広島県地域保健対策協議会医療情報活用推進専門委員会委員長
島川 龍載
15:30~16:10
シンポジウム
「自治体病院におけるオンライン診療を考える」
【ファシリテータ】
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻行動社会医学講座保健社会行動学分野教授
橋本 英樹
【パネリスト】
登壇者全員
および
メディヴァ代表取締役
広島県立病院機構評価委員会委員
大石 佳能子
16:10~16:15
閉会の辞
募集概要
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