第13回社会福祉・医療事業の経営研究セミナー『医療介護総合確保を考える』

主催:一般財団法人 社会福祉・医療事業の経営研究会
後援:東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻保健社会行動学分野、静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科附属医療経営研究センター

 わが国の医療制度改革が本格的に始まったのは1980年代半ばであるから早や30年が経過した。改革の中身を一言でいえば、増え続ける医療保障財政をいかに持続するかに尽きる。保険料であれ、公費であれ、それらをプールした医療保障の資金と医療提供の費用のバランスをどう採るかの医療制度改革は続く。第3次改革にあたる1997年に介護保険制度の法案が国会を通過し、2000年度から同制度が始まったが、このとき高齢者医療費を部分的に医療保険制度から介護保険制度に肩代わりさせ、医療保険財政を持続させ得た。その介護保険の費用支出もどんどんと増え続けている。そして、2006年に第5次となる医療制度改革に際して、2002年度以来2度目となる診療報酬のマイナス改定を行なうことで国民医療費の伸びを抑えたものの、その後は今日に至るまで高い伸びが続き、大掛かりな医療制度改革の実施は必定であった。そこへ昨2014年に「医療・介護総合確保推進法」が公布・施行された。これが第6次医療制度改革の目印となろう。
 介護保険制度開始のカラクリが教えるように、医療と介護は元々分けて扱われる必然性はない。本セミナーを企画開催してきたメンバーの一人である西田在賢は介護保険制度が始まった当時、川崎医療福祉大学に勤め、2001年に上梓した『医療・福祉の経営学』(薬事日報社)の前編「医療・福祉の経営原理」のプロローグに次のように記していた。「わが国の医療や介護の制度が諸外国のそれと同じにできるとはいえない。最近の経済研究が教えることのひとつに経路依存性(path dependence)という言葉があるが、これは現在の制度や市場などが『歴史的な経路』によって規定されていることを意味する。だから、たとえば医療や介護については日本だけでなく、米国にも、英・仏・独等の欧州にも同様なシステムや制度が存在するが、しかし、国民性を反映して、国によって制度は異なっており、それぞれに特有の運営を行っていることが説明される。(中略)このような限定合理性や経路依存性の考え方を了解すれば、日本が他の国々と較べて医療や介護のシステムに対するアプローチが違うのは、社会認識上の習慣や思考の上での習慣、そして支配的な物事の在り方や法律などの制度に関わる違いのゆえであると説明される。(中略)そのような基本的な理解のもとで、今後、急速に進むであろう医療や介護の保険制度改革の必然性を捕らえておくことも、関係する事業経営者にとって重要となるはずである。」
 じつのところわが国は介護保険制度以前は、介護を福祉として扱っており、介護措置は行政の仕事であり税で賄うものだと説明してきたところを、社会保険で賄うとともに介護保険から給付を受けるのは保険加入者の権利だと解釈を変え、介護サービスの提供者も利用者も頭の切り替えを迫られて混乱した。一方で米国などではヘルスケアというひとつの概念で医療と介護を扱うのを見てきた西田は、わが国の将来において医療保険制度と介護保険制度の合流は不可避だと診ていたが、どのような経路を辿ってそこに到達するかについては皆目検討がつかずにいた。ところが、このたび医療介護総合確保推進法案と総称される各種の法令が出たので、これを機会にこれまでの経緯を整理する。そして、先年からの地域包括ケア体制や今年度から進む地域医療構想と病床機能整理の課題を念頭に今後の医療介護の事業経営の参考となるパネルディスカッションを行いたい。ファシリテーターは、昨年度から大きな話題となっている非営利ホールディングカンパニー医療法人の厚労省検討委員会委員を務めた橋本英樹が担当する。

開催概要

開催日:2015年(平成27年)10月24日(土曜日)午後1時30分から午後4時まで
会場:川崎医療大学 講義棟
参加費:2000円
※今回で13年目を迎えます本研究セミナーは、当初、実費負担により医療・福祉経営にご関心のある方々が全国から集いました。しかしながら、主催者側を代表します西田在賢が静岡県立大学に赴任した第4回以降の開催は、勤務する公立大学の事情により実費徴収の手続きが困難となりました。他方で、地元企業等からの寄付金で行なえることになり、第10回目までは静岡県立大学に足をお運びいただくことで参加費を無料とすることができました。とはいえ、県外の方には旅費負担が小さくありませんでした。そこで、東京あるいは全国の有志たちのお誘いの場所での開催がかなうように、本研究セミナー発足時のメンバーを中心に一般財団法人社会福祉・医療事業の経営研究会を設立してセミナー開催に臨むこととなりました。本研究セミナーを共に興しました橋本英樹先生と私は、職務上のこともあり、財団には直接かかわりませんが、これまでどおり、本セミナーの開催に尽力いたします。

西田在賢 拝

セミナープログラム

13:30~13:45

開会の辞

13:45~15:00

「第6次医療制度改革/医療介護総合確保推進までの経緯と今後」

静岡県立大学大学院附属
医療経営研究センター長
西田 在賢

15:00~15:15

<休憩>

15:15~16:25

パネルディスカッション
「医療介護総合確保/地域のガバナンスを考える」

【ファシリテーター】
東京大学大学院医学系研究科教授
橋本 英樹
【パネリスト】
静岡県立大学大学院附属
医療経営研究センター長
西田 在賢
矢野経済研究所首席研究員
遠藤 邦夫
岡山の医療関係者の方々ほか

16:25~16:30

閉会の辞

一般財団法人 社会福祉・医療事業の経営研究会
理事長
角田 愛次郎

募集概要

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