第12回社会福祉・医療事業の経営研究セミナー
地域包括ケア体制のマネジメントと家庭医の役割を考える
主催:一般財団法人 社会福祉・医療事業の経営研究会
後援:東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻保健社会行動学分野、静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科付属医療経営研究センター
昨今のわが国は世界でも抜きんでた人口高齢化に加速度がついており、人口減少の傾向も明らかです。そのため、社会保障体制の持続可能性への懸念が年を追って高まっています。この懸念を解消する施策のひとつとして期待されるのが「地域包括ケア体制」の普及です。ところが、地域ごとの医療・介護資源の違いのみならず、地域の価値観や文化の違いもあって、全国一律の画一的な「地域包括ケア体制」の構築や普及は困難との理解が進んでいます。
そのようななかで、昨年の本セミナーでは『医療・介護保障の持続条件を考える』と題して、地域包括ケアの法制化推進に努められた元厚生労働省老健局長の宮島俊彦氏をお招きして、講演「わが国の医療・介護保障のマネジメント」をご講義いただき、パネルディスカッション「医療・介護保障の持続条件を考える」を開催いたしました。
このときの学びを念頭において、あらためて地域包括ケア体制に関連する要素を拾い上げて行きますと、この体制構築は超高齢社会における地域の「まちづくり」にほかならないと結論づけられそうです。すなわち、水道・ガス・電気・交通・通信等々と順次に社会基盤を整えて衣食住の足りたわが国では、次に求めるのは健康と長寿をかなえる医療・介護の社会基盤の整備であり、医療・介護のコーディネーション(調整)とデリバリー(提供)のシステム整備です。すなわち超高齢社会の「まちづくり」にほかならないわけです。
さて、医療・介護について、一般市民が先ず初めに思い浮かぶ相談相手は「医師」なのですが、現実の日本の医師は開業医も勤務医も診療科の専門を掲げていて、最初にどの医師に相談すればよいのかがわかりません。では他のどの専門家に相談すればよいのかも、やはり一般市民には判然とせず、逡巡します。そこで、とりあえずは病院へ駆け込むことが続いているのが日本の現状であり、「地域包括ケア体制」構築の難儀もこの問題に帰着します。
しかし、問題打破のための大きなヒントは以前から示されています。それは、英国とその連邦国あるいは近隣国で発達した「家庭医(family doctor)」という専門医の仕組みです。
その「家庭医」についての研究と実践の第一人者であります福島県立医科大学の葛西龍樹教授は、かねてより日本の医療制度改革の鍵としてプライマリ・ケアの重要性を訴えてこられました。そのプライマリ・ケアとは、「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療サービス」だと説明されます。まさに、先に言う堂々巡りを脱して地域包括ケア体制構築へと導いてくれる糸口を示されています。
そこで、このたびは葛西教授をお招きして家庭医の役割についてご講演をたまわり、続いて家庭医の役割を念頭に置いた地域包括ケア体制のマネジメントなるものについてパネルディスカッションを行います。ファシリテーターは暦年の本セミナーで好評を博される橋本英樹先生ですので、どうぞご期待ください。