第9回社会福祉・医療事業の経営研究セミナー『(静岡で)日本の地域医療体制を考える』

主催:静岡県立大学 地域経営研究センター 現代社会福祉経営研究室
後援:静岡県医師会 静岡県病院協会 静岡県看護協会 静岡県薬剤師協会 医療経済研究機構 独立行政法人医療福祉機構

 近年のように発達した医療提供においては、かつてのような「施設完結型」ではなく、「地域完結型」が妥当であることは、医療および政策関係者の間で意見が一致するところです。しかしながら実際のところは、普遍的な成功を収める地域完結型医療提供の事例が皆無に等しく、その理由として、「地域」の捉え方が曖昧であることが指摘できます。
 たとえば、世界の中で日本は極東アジア地域に位置すると表現されたり、また、静岡の東部というエリアを指して地域の議論がなされたりといった具合です。要は、議論のたびに対象を絞る目的で地理的要件を確認するものが「地域」ということでしょうか。
 このことは、「地域医療」なる用語の曖昧さと通じるところがあります。武見敬三東海大学教授によると、世界保健機構WHO でもかねてより地域医療の重要性を取り上げながらも、定義の曖昧さが災いしてか、近年は議論のとりまとめを放棄した感があるとのことです。
 ちなみに、地域医療の英訳は一般的にCommunity Healthcare ですが、「コミュニティー」が眼目とする「地域」は、日本で言うところのせいぜい「市町」という行政区域です。ところが、医療提供においては、「主として病院の病床及び診療所の病床の整備を図るべき地域的単位」と定義されるわが国の二次保健医療圏、すなわち、市町村単位ではなく、複数の市町村を一つのまとまりとした「実医療圏」相当が、地域医療として検討するにふさわしいと考えます。
 そこで、「地域医療」をRegional Healthcare を念頭に置いた「実医療圏」として捉え、かねてより指摘される日本の医療提供体制の低い生産性の改善策についての研究が急がれるものと思います。とくに、このたびの大震災で日本はヒト・モノ・カネの多くのリソースを失っただけに、生産性向上は重要かつ緊急の課題であります。

 本セミナーを開始して9 年目となる今年は、現代社会福祉経営研究室を主宰する私が勤務する静岡県立大学が25周年を迎えて、所属する大学院研究科の名称が「経営情報学研究科」から「経営情報イノベーション研究科」へと変更された機会に、これまで責任者を務めていた地域経営研究センターから分化、発展した形で「医療経営研究センターCenter for Health services Management Studies」の設立が認められ、ここのセンター長に就くことになりました。そこで、本学25周年イベントに医療経営研究センターが寄与すべく、国内外の一流の研究者に特別講演をご依頼する運びとなり、そのテーマとして医療・介護提供の地理的範囲を考える基本ともいうべき「地域医療」を取り上げることといたしました。そこで、本年度は、この大型セミナーを第9年目の社会福祉・医療事業の経営研究セミナーとしてご案内することといたします。

現代社会福祉経営研究室代表 西田在賢

開催概要

開催日:2011年(平成23年)8月30日(土曜日) 13時から16時まで
会場:静岡県立大学 大講堂

セミナープログラム

13:00~13:15

開会の辞

13:15~14:15

「半世紀に至る日本の国民皆保険制度と今後の保健システム強化の課題」

ハーバード大学教授
マイケル・ラィッシュ

14:15~14:25

<休憩>

14:25~15:00

パネルディスカッション
「静岡県の地域医療の課題」

静岡県内で最も課題を抱える中東遠医療圏から公立病院長3人がパネリスト

【ファシリテーター】
静岡県病院協会長
神原 啓文

15:00~15:55

「医療保険制度改革と地域医療の在り方」

東海大学教授
武見 敬三

15:55~16:00

閉会の辞

募集概要

申込受付は終了しております。

関連情報

2011年8月31日の静岡新聞に本セミナーが紹介されました。