第8回社会福祉・医療事業の経営研究セミナー
イノベーションの時代の医療・福祉経営を考える
主催:静岡県立大学 地域経営研究センター 現代社会福祉経営研究室
後援:医療経済研究機構 独立行政法人医療福祉機構
イノベーションinnovationという英語の意味するところは「革新、改革、刷新、新機軸」である。経済学者シュンペーターは「企業家によるたゆまないイノベーションが経済を変動させる」との言を残している。もっとも、この用語には具体性には欠けるところがあり、おおよそ社会学的ないしは哲学的な言葉でもある。少なくとも理系の研究に携わる人たちには、インベンションinvention「発明」ならば身近な課題だが、イノベーションinnovation「革新、改革、刷新、新機軸」では、かけ声だけと受け取られかねない。しかし、ヘルス・リフォーム(health Refom、和訳は「医療改革」)の取り組みに通じる概念として一考の余地がある。
近年、世界の国々で取り組まれるヘルス・リフォームの中身を一言でいえば、いずれの国でも増え続ける医療・介護保障のための財政をいかに管理するかについての議論である。税金であれ、保険料であれ、それらをプールした国民の医療・介護の資金と、提供する医療・介護の内容をどのように管理するかの議論である。そこでは、発達する経済社会の中で医療や介護がどのような役割を果たすかの研究が必要とされ、例えば社会の予算制約の考え方や、医療・介護の効率的な資源の利用やアクセス管理についての考え方、あるいは社会保険方式のような強制保険方式ならば管理する政府は国民に説明責任を果たさねばならないといった諸々について考えねばならない。
わが国が本格的なヘルス・リフォームに着手したのは1980年代半ばだったから、かれこれ四半世紀が過きた。それだけの年月を経ても、じつのところ医療・介護の財政は深刻さを増すばかりで、具体的な解決の見通しは立たない。その行き詰りをブレークスルーするために、既存の概念にとらわれない柔軟な発想に基づいた革新、すなわちイノベーションが求められている。
2000年度から公的介護保険が始まった背景には、わが国人口高齢化の進展が高齢者医療費を増大させるため健康保険財政が逼迫していたことがあり、結果40歳以上の国民に加入と保険料支払いを義務付けた介護保険制度は、高齢者医療費の一部を肩代わりすることになった。但し一部とはいえ、その額は初年でも約1.7兆円相当、昨今は7兆円超えと巨額である。その後の議論で「医療費増大は高齢者が増えているからではない」といわれるのはもっともであろう。あるいはまた、病院の機能分化を進めるためにDPCを導入して何年も経ち、対象病院の数が1500~ 1600辺りで収まって、わが国の急性期病院の数がほぼ判明する。結果、残り6000ほどの一般病院の扱いが次の医療計画の中で取り沙汰され
よう。そのときに医療機関として残る病院は半数余りであろうか。残りの病院はというと「介護機関」ということになろうか。と言っても、両者の違いはファイナンスの違いでしかない。前者は健康保険制度から、後者は介護保険制度からファイナンスされるということである。
いずれにせよ、介護保険制度もDPCの導入も医療・介護保障のイノベーションであったと整理できる。このたびのセミナーでは、このようにイノベーションが次々と現れる時代の医療・福祉の経営について考えてみたい。
現代社会福祉経営研究室代表 西田在賢
開催概要
開催日:2010年(平成22年)10月30日(土曜日)
会場:静岡県立大学
セミナープログラム
13:00~13:15
開会の辞
13:15~14:00
「ソーシャルイノベーションとヘルスリフォーム」
現代社会福祉経営研究室 代表
西田 在賢
14:00~15:00
「医療・福祉のイノベーションに何が期待できるか」
上智大学教授
元厚生労働省健康局長
高原 亮治
【ファシリテーター】
東京大学大学院医学系研究科教授
橋本 英樹
15:00~15:15
<休憩>
15:15~16:15
「医療機器とイノベーション」
エドワーズライフサイエンス社 日本代表
全米国医療機器工業会会長
ケイミン・ワング
【ファシリテーター】
矢野経済研究所主席研究員
遠藤 邦夫
16:15~16:30
総括
東京大学大学院医学系研究科教授
橋本 英樹
閉会の辞
募集概要
申込受付は終了しております。